氷のような彼は陽だまりのように暖かい
「新入りが来たらしいからどんな子か見に来たのよ。可哀想にねぇ、まだこんなにも若いのに先の未来強制的に奪われちゃったんだもんね?」
そんなこと思っていないのが分かってしまうほどの冷たい笑みで私を嘲笑った。
「怯えちゃって可哀想に。」
怪しげに笑いながら彼女はどこかへ行った。
なんで私だったんだろう。あの時、あの時間に、あの道を通らなければ、今頃私は普通に会社に出勤して仕事して、同僚とたわいもない会話をしていたはずなのに。
なんで私がこんな目に会わなきゃいけないの?
私じゃない、見ず知らずの違う人だったらよかったのに。なんて黒い感情が胸の中を渦巻く。
それからどのくらいの月日がたったのだろうか。
監禁生活が始まってから1度も陽の光を拝んでいない。
食事は3食でるが、どれも食べる気にはならず死なない程度に食いつなぐだけでいまではすっかり痩せてしまった。
お風呂にだってはいれなくて、鉄格子の部屋の中で洗面器に水をはり頭を突っ込んで洗うだけだ。
ショートカットだった髪が胸元まで伸びているあたり、かなりの時間が経っているようだった。
だが、そんなことはもうどうでもいい。そう思わざるを得ないくらいに、この長い時をかけて感情を凍らせた。