駆け落ちする電車の中で
私たちは微妙な空気のまま、歩道を並んで歩く。
完全に二人っきりなんて初めてで、私は緊張でなにも話せなかった。

『明日香ちゃんってさ、真凛とタイプが真逆だよね』

『よく言われる。何で仲いいのって。真凛は誰とでも仲良くなれて、明るくて、私が持っていないものをたくさん持ってる。私にとっては、そんな真凛が輝いて見えて、憧れなの』

真凛は何事にも一歩踏み出せない私の背中を押してくれる。
本人にはそんなつもりはないのだろうけど、私にとってはそれが嬉しくて、いつも勇気をもらっていた。

『明日香ちゃんは、とても素敵だよ』

『えっ…?』

私は立ち止まって大毅を見た。
彼の思わぬ言葉に私は顔を赤らめる。

『明日香ちゃん』

彼の手が私の手に触れる。
その瞬間、心臓が大きく跳ねた。

『こんなこと言ったら、明日香ちゃんを困らせてしまうかもしれない。だけど、もう抑えられない』

大毅の目は、真剣そのものだった。
彼の目から私は目を逸らせなくなる。


『ずっと可愛いなって思ってたんだ』


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