白雨の騎士
「…さぁ、君たちの要求はなんだ。」
ルーン王子がキトに問いかけた。
「さっき言った通りだ。国王の座から降りてもらおう。」
国王はキトの言葉に眉間に皺を寄せた。
「…見ず知らずな者に突然そんな事を言われておいそれと受け入れる訳がない。理由を話せ。貴様は誰だ」
すると、キトは胸から下げていたペンダントを突き出した。中には男の人が映った写真がある。
国王は目を細めてその写真を見ると、ハッとしたような顔でもう一度キトの事をよく見た。
「俺の父親だ。顔はよく覚えてるはずだ。25年前、お前の側近だった。当時、お前のワインに毒を盛った罪で追放された。」
国王は額から汗が一筋垂れた。
「だが親父は冤罪だった。本当の犯人はお前の従兄弟。だが、王家の者の犯行は公にはしなくないと考えたお前たち王族が無実の親父に罪をなすりつけた。」
ルーン王子は初めて聞いた話に驚き国王を見た。
「…ルカ、本当か?」
アンナがルカに聞いた。
「いや、俺も初めて聞いた。孤児院から叔父が引き取った以前の事は詳しくは聞いていなかった」
キトはペンダントを胸にしまうと、国王に手をかざした。
「さぁ、この事を公表しその座から降りろ」
キトの手のひらから黒い煙が湧き出した。
「まずい」
ルカはホールに入りキト目掛けて手を振り下ろした。
天井に突き刺さっていた兵士達の剣が束になりキト目掛けて突き刺さった。
「ルカさん…」
間一髪、国王に黒の煙の塊が到達する前にルカが凌いだ。
「キト、やめるんだ」
アンナとシドも国王とルーン王子の前に飛び出した。