白雨の騎士
二人の力は互角だった。
何度も剣が交わり、黒い煙が当たりを暗闇に包み込んだ。
「…くっ!」
ルカは手のひらを地面に翳すと、辺りの黒い煙が吸い込まれ、視界が開けた。
「はっ!」
キトはルカの腹目掛けて脚を振りかざした。
ダンッ!!!
ルカは腹を蹴られ、身体が壁に打ち付けられた。
壁には亀裂が入り、今にも穴が空いてしまいそうな程だった。
ずるりとルカの身体が地面に落ちた。
「はぁっ」
キトは脚を下ろすと、すぐに国王とルーン王子の方へ剣を向けた。
ザン!!
二人に斬りかかろうとした所で、アンナがそれを塞いだ。
「…くっ、ルカ!大丈夫?!ルカっ!」
アンナの叫び声にもルカはまだ意識が戻らない。
「アンナ隊長!!」
「はっ、」
ドカッ!!!
キトの他の仲間がアンナに斬りかかった。
「っつ、」
剣はアンナの腕をかすめた。
シドも剣を抜き、国王とルーン王子の前に出た。
「アンナ隊長、大丈夫ですか?!」
「かすめただけだ。シド、こいつらを任せた。私はルカを」
シドは息を吸飲み、冷静に周りを見た。
キトの仲間は3人。ルカはまだ気を失っている。
とにかく、国王と王子の身を守らなければ。