白雨の騎士

二人の力は互角だった。

何度も剣が交わり、黒い煙が当たりを暗闇に包み込んだ。


「…くっ!」


ルカは手のひらを地面に翳すと、辺りの黒い煙が吸い込まれ、視界が開けた。


「はっ!」


キトはルカの腹目掛けて脚を振りかざした。


ダンッ!!!

ルカは腹を蹴られ、身体が壁に打ち付けられた。

壁には亀裂が入り、今にも穴が空いてしまいそうな程だった。

ずるりとルカの身体が地面に落ちた。


「はぁっ」

キトは脚を下ろすと、すぐに国王とルーン王子の方へ剣を向けた。


ザン!!


二人に斬りかかろうとした所で、アンナがそれを塞いだ。


「…くっ、ルカ!大丈夫?!ルカっ!」


アンナの叫び声にもルカはまだ意識が戻らない。


「アンナ隊長!!」

「はっ、」

ドカッ!!!


キトの他の仲間がアンナに斬りかかった。


「っつ、」

剣はアンナの腕をかすめた。


シドも剣を抜き、国王とルーン王子の前に出た。


「アンナ隊長、大丈夫ですか?!」


「かすめただけだ。シド、こいつらを任せた。私はルカを」

シドは息を吸飲み、冷静に周りを見た。

キトの仲間は3人。ルカはまだ気を失っている。

とにかく、国王と王子の身を守らなければ。



< 121 / 219 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop