白雨の騎士
「…日の入りだ」
窓の外を見てアンナが言った。
「アンナ、少し休んだらどうだ。出立まではまだ時間があるだろう」
アンナは大きく伸びをするとローブを羽織った。
「いや、大丈夫。シドの様子を見てくるよ」
「…お前、シドのことが好きなんだろ」
ルカの言葉にアンナは足を止めた。
シドの事が好き
初めて言葉にされてアンナは自分でも妙に納得できた。
「…そうなのかもしれない。」
意外にもアッサリ認めたアンナにルカは思ったより驚いた。
近衛の隊長として男よりも男らしく今まで職務に全うしていたアンナ。
「シドに気持ちは伝えないのか。」
アンナは首を横に振った。
「確かにシドの真っ直ぐな性格に惹かれているけど、この気持ちを伝えたいかというと違う。シドとはこのまま良き仲間としてお互い高め合っていきたい。」
ルカはふっと笑みを溢した。
「まぁ良かったよ。お前も一様人を好きになる心がある事が分かって。俺が告白した時なんか表情一つ変えなかったぞ。」
アンナはカッと顔が赤くなった。
「そんな事ないよ。あの時は、すごくびっくりしたよ…」
ルカはアンナの表情を見ると何か納得したような顔をした。
「…ほら、早くシドの様子を見てこい。それから、俺はこの件が片付いた後暫く旅に出るよ。」
「えっ…」
「…ハデス家の当主になる前に他の国を色々見て回りたい。」
ルカもハデス家宛の手紙を書き終えると立ち上がった。
「元気でな、アンナ。」
ルカはにかっと笑って部屋を出て行った。