白雨の騎士

「…うん、もう大丈夫だ。少ししたら動けるようになるよ。国に帰ってからも無理はしないように。」

お医者さんが出て行くと水を一杯飲んだ。

口が酷く乾いていた。

そこへルカもやって来た。


「…シド、良かった。」


アンナもルカもとても安心した表情をした。


「何があったのか教えて下さい。キト達は…」


ルカは椅子に腰掛け、そんなに急ぐなとシドの肩に手を置いた。


「キト達は捕まったよ。シド、君は恐らくウォルドーフ家の生き残りだ。」


ウォルドーフ家の生き残り…?

思いがけない言葉にシドは頭が混乱した。


それから、自分が光の力を使いキトの闇の力を封じた事を説明された。

話を聞いてもまだ理解し難かった。

自分にそんな力があったなんて今まで知らなかった。

ルカは1枚の紙を差し出した。そこにはこの間アリスに連れられて行った小さな小屋でみたあの紋章が描かれていた。


「…これはウォルドーフ家の紋章だ。シドが光の力を使った時に身体にこの模様が浮かび上がっていた。」

シドは自分の身体を見たが今はもうその模様はなにもなかった。


「数時間したら自然と消えたいったのよ。」

アンナの言葉にシドは頭に手を当てて少し考え込んだ。

自分の出生については詳しく知らない。物心ついた時から孤児院で暮らしていた。ただ孤児院の先生が父親は王宮の近衛隊だったということだけ教えてくれた。

それ以外は家族については何も知らなかった。
< 128 / 219 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop