白雨の騎士
「シド、大丈夫?」
「アリス様…はい。大丈夫です。」
そう答えるとアリスはとてもほっとした表情をした。
シドに駆け寄ると、手をギュッと握りしめた。
アリスの行動にシドは驚いて一歩後ろに下がった。
「…怪我、してない?」
「あ…はい、」
顔を覗き込むアリスにシドは目を逸らした。
アリスは暫くじーっとシドの顔を見ると手を離した。
「良かった。」
アリスは優しく微笑んだ。そんな彼女の暖かく心から安堵している表情を見てシドも自然と笑みが溢れた。
それにしても色んな人に心配をかけてしまったとシドは思った。
その後、慌ただしく帰国する準備が進められた。
シドはアリスが一緒に馬車に乗るように勧めてくるのを必死で断った。王家の馬車にいち近衛隊が同乗するなんてあり得ない話だったからだ。
アンナが別に馬車を用意しようかと聞いてきたがそれも断った。
キト達との一件のことは途中までしか覚えていないが皆んながこれほど心配するなんて、自分は光の力を使ってどんな事をしたのか気になった。
準備が整い、正門に馬車が並ぶとルーン王子が見送りに来た。