白雨の騎士
「アリス殿、このような事になり申し訳ない。」
ルーン王子はアリスに頭を下げた。
「いいえ。元はと言えば我が国の者が犯した事です。こちらこそ申し訳ありませんでした。」
アリスの言葉にルーン王子は笑みを見せた。
短いアナモネア国での滞在が終わり馬車はアジュール国に向けて出発した。
「シド、聞いたぞ。大丈夫だったのか?」
隣を走るルイが聞いてきた。
「ああ。もう何ともない。」
「お前がウォルドーフ家の人間だったとはな。俺よりもおぼっちゃまじゃねーか。」
もうルイにまでこの話が知られているなんて…シドは溜息をついた。
「何がおぼっちゃまだ。俺は農家出身で、ウォルドーフなんて名前一度も聞いた事ないんだ。」
そう言い捨てると馬の腹を蹴り、ルイより前に出た。
「…まぁお前は貴族って感じは全くしないけどな。」
後ろから聞こえてくるルイの声を無視してシドは更に早く走り出した。
そうだ。俺は貴族なんかじゃない。
シドは再び手のひらを開いて心の中でポツリと呟いた。