白雨の騎士

アリスとシドは森の中へ向かった。


「馬車はどうしたの?」

「修理が必要なようです。一旦戻ってすぐに帰って来ます。」


「分かったわ。あー、それにしても気持ちいい」


アリスは腕をいっぱい広げて森の空気を吸い込んだ。


木々の間から太陽の光がキラキラと差し込んだ。

シドはアリスの後ろをゆっくりと歩いた。

確かにここはとても気持ちがいい。

アリスは立ち止まり木に手を当てて上を見上げた。

木の葉が風に揺られ、音を鳴らしている。

「離宮へ来る時はここにも必ず立ち寄るの。空気が一段と美味しいでしょ。」


「はい、とても。」


アリスは森の中を暫く歩いた。

落ちている木の実を拾ったり、木にもたれかかり太陽の光を浴びたり。

今日は周りにたくさんの人もいない。キツく締め付けるコルセットも着ていない。

全てから解放されたような感覚だった。

シドはそんなアリスを見て邪魔をしないよう少し離れたところから見守った。


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