白雨の騎士
光の力
「…隊長」
アンナが部屋に戻る途中廊下でアートと会った。
「アンナ、離宮への護衛ご苦労だった。明日から休暇か。また実家には帰らないのか?」
アートの言葉にアンナは頷いた。
「そうか。久しぶりの休暇だ、ゆっくりしなさい。それと、シドのあの件だが…ハデス家へ行くようにシドに伝えた。魔法使いのことは我々は専門外だからな。」
「ハデス家へですか?」
この国で唯一魔法使いがいる一族。
たしかにハデス家へ行けば詳しく分かるかもしれない。
「シド、だいぶ思い悩んでる様子だったからな…」
確かに、それは一緒に離宮入ったアンナも感じていた。
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翌朝、シドは朝一番で城を出てアーデル家に向かった。
「そうだ、みんなに何か土産を…」
途中、朝の市場に寄って行くことにした。
街には朝早くから出店がたくさん出ている。
新鮮な野菜に釣ったばかりの魚介類。
この市場はアーデル家で働いていた頃はよく来ていた。
王宮に入ってから街に出ること自体久しぶりだった。
あちこち店を見て回って、旦那様には皮で出来た狩猟用の手袋。奥さんには赤ワイン。そして、ハンスには、
シドは一軒の店で、ガラスで出来た髪留めに目が止まった。
繊細な細工で出来た深い青色の髪留めを手に取った。
「綺麗だろう?安くしとくよ」
店主の言葉にシドはこの髪留めをハンスへの土産にすることにした。