白雨の騎士
中に入って椅子に腰掛けると、ふーっと身体から力が抜けた。
長年暮らした家はやはり落ち着く。
ハンスがお茶を淹れてくれた。
「お父様はじき帰るわ。久しぶりね、シド。少し痩せた?」
ハンスは少し心配そうにシドに尋ねた。
「んー、少しだけな。でも大丈夫だ。」
ガチャっと扉が開く音がした。旦那様と奥さんが戻って来た。
「シド!お帰り」「お帰りなさい、シド」
久しぶりに2人の顔を見てシドも自然と笑みが溢れた。
3人に土産を渡し、久しぶりに家族揃って夕飯を食べた。
「王宮での暮らしはどうだ?」
「はい、大分慣れてきました。」
旦那様も奥さんも変わらず元気そうで安心した。
「もっとゆっくり出来たらいいのに」
手作りのケーキを切り分けながら奥さんが言った。
「すみません。ちょっと急用が出来て、明日ハデス州に行かなければいけなくて…」
「ハデス州。また遠いところへ」