白雨の騎士

「シド君だね。この度は我が一族の者が大変な迷惑をかけた。キトは明日やっとアナモネアから身柄がアジュール国に引き渡される。ルカが王都まで行く予定だ。数日後、裁判が開かれる。」


シドは紅茶を飲みかけて、少し俯いた。


「君の力がなかったら被害が拡大していたかもしれない。本当に感謝する。」


「あの、本当に僕がしたことなんでしょうか。」


シドの問いかけにアテクシは紅茶を飲みながら暫くシドを見つめた。

あの日、止めに入ろうと必死だったことは覚えているが次に目が覚めた時は医務室のベッドの上だった。

「…君からは確かに光の力を感じるよ。」

そうキッパリと言われてシドは身体がドンと重くなった気がした。


「今日はどうしてハデス州まで?」


「この、力の事を詳しく聞きたくて…それと、ウォルドーフ家についてもし何かご存知であれば…」


アテクシはカップを置くと椅子に深く腰掛けた。


「…魔法使い。昔はこの国にもたくさんいたが、今ではこのハデス州にもごく僅か。その中でも闇の力を持つハデス家と光の力を持つウォルドーフ家は昔からある約束を結んでいた。」


約束…?


「君も見た通り闇の力は人を傷つける、大変恐ろしい力だ。この力は光の力を持つものしか消す事は出来ない。その為、闇の力で人々に危害を加える者がいた時、ウォルドーフ家の光の力で消してもらう約束を交わしていた。」

アテクシは立ち上がると窓から外を眺めた。


「…光の力についてだが、今私が見せたような物を自分の意思で動かすような事は出来ない。他には魔法使いはまじないで薬を煎じたりもするがそれも出来ない。光の力を持つ者が出来ることはただ一つ。闇の力を消し去る事だけ。」


その言葉にシドは少し驚いた。

この力は闇を封じるためだけのもの…





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