白雨の騎士
「さぁ、暗い話はこれまでだ。それにしても、シドはまだ近衛になって半年とちょっとだろ?随分アンナが君を評価しているようだ。剣はどこかで教わったのか?」
「小さい頃から近衛隊になりたかったので、刀鍛冶のガストという人に教わりました。ですがまだまだです。アンナ隊長にはいつまでたっても及びませんよ。」
「あいつは男よりも男らしいからな。気が強くて大変だろ?」
「いえ…まぁ、本当に強い方だなとは思います。」
ルカとアンナはとても仲が良いように見えた。
昔から一緒に近衛隊として頑張ってきた戦友のようなものなのかとシドは思った。
「…俺さぁ、昔あいつにこっぴどく振られてんだよ。」
「えっ?!」
思いがけないルカの言葉にシドは思わず声を上げた。
ルカさんはアンナ隊長の事が好きだったのか…?
「それが理由で近衛を辞めたわけじゃないぜ?この家を継がなきゃいけなかったからな。アンナは恋愛には興味がないと思ってたけど、この間会ってあいつにも女の部分があるんだなと思ったよ」
ルカの言葉がシドはいまいち分からなかった。
「…?どういう事ですか?」
「…いや?何でもない。それより、お前はどうなんだ!彼女はいないのか?」
バンっとルカが背中を叩いて、シドは思わずむせた。
「…っ、居るわけないですよ。」
「なんで?そーんなに男前なのに。」
「僕も恋愛する余裕が無いですね。今はやっと近衛隊になれた事が嬉しいので」
ルカははぁっと大きく溜息をついた。