白雨の騎士
アランの帰国

翌日、王都へ帰る前にルカに案内されてシドはハデス州の町を見て回った。

やって来たのは屋台や市場があり活気のある町、マンリ。

「随分賑やかですね。」


「そうだろ。ここは何でも揃っているからな。どうだ?土産でも買っていったら。」


土産…ルイにでも買っていこうかと思ったが、安物だと跳ね除けられるのが想像できる。

ふと、紫の布で覆われた屋台が目に止まった。中を覗くとローブを羽織った老婆が怪しげに鍋をかき混ぜている。


「…おや?アンタも魔法使いだね。」


「えっ、ま、まぁ。」

すると、老婆は棚からなにやらガサガサと小瓶を取り出した。


「…魔法使いに売るのもなんだけど、これなんかどうだい?この粉を好きな女にふりかけるとあっという間にあんたに恋をするってしろもんだ。」


老婆は怪しげたピンク色の粉が入った瓶を差し出して来た。


「まぁアンタよくみると色男だから必要ないかもしれないがね。これを使えばお姫様だってイチコロだ。」


「い、いや…俺は…」


すると、ずいっと横からルカが割り込んできた。


「悪いねばあさん。こいつ、恋愛経験ゼロだから必要ないわ」


そう言ってシドを店から連れ出した。


「ああいう魔法で煎じた変なまじないを商売にする奴もいるんだよ。まぁ、効くかどうかは分からないがな。それより、土産は買わなくていいのか?アリス様や、アンナにはどうだ?」


「アリス様に僕から何か物を贈るなんて恐れ多いですよ…。アンナ隊長は…んー、何が好きとか全然知らないですし。。」


シドの言葉に、ルカはハァッと深い溜息をついた。

結局市場では何も買わずに、ハデス州を後にした。


ルカと共に馬車に乗り、1日かけて王都に戻って来た。



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