白雨の騎士
「…近衛になって半年で剣術大会出場って。シド、お前国王様の前で何か目立つことでもしたのか?」

控え室で支度を進めるシドの横でルイが呆れたように言った。


「…何もしていない。」

シドは靴紐を結ぶ手が震えていた。


「まぁ、国王の気まぐれだとしても。お前先輩達の反感を一身に買ったな。」

ルイの言葉にシドは深く溜息をついた。

どうして突然自分が参加することに…

「…お、始まったみたいだぜ」

控え室のテントの隙間から、闘う兵士たちの姿が見えた。


歓声と共に剣がぶつかり合う音が聞こえて来る。




***


「始まりましたよアリス様!今年は誰が優勝するんでしょうね?」


目をキラキラさせながら試合を見るソフィアの隣でアリスはつまらなさそうな表情で大会を眺めていた。


一試合、また一試合と終えて行く試合を前にアリスはふぁっと欠伸をした。


剣術大会は王宮内の婦人達の間でも人気の行事だった。


多くの女性が兵士たちの試合をうっとりと見つめていた。


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