白雨の騎士
「うーん、傷は深いが縫うまではいかないな。まずは血を洗い流そう。」

ヘレナは布を水で濡らして傷口を履いていった。


「つっ、」

シドは少し表情を歪めた。


「君、名前は?今日の剣術大会の出場者?」


「はい、シドと言います」

ヘレナは慣れた手つきで傷口を洗うと、薬草を塗った。


「あ、もしかして。噂の最近入った近衛の新入り?」


「そうです…」

ヘレナはははーんとシドを見てニヤッとした。


「…もうアリス様とそういう関係に?」


「ち、違いますよ!そんな事ある訳ありません。僕も何がどうしたのか…」


薬草を塗り終えて丁寧に包帯が巻かれた。


シドははぁっと溜息をついた。


「アリス様のあんな焦った様子、初めて見たよ。やるね、色男」


「だから!違いますって!!」

ヘレナは面白そうに笑った。


「…私は医務室長のヘレナ。アリス様の担当医も勤めている。よろしくね」


「はぁ、こちらこそ。」

ヘレナは立ち上がり、隣の診察室にいるアリスを呼びに行った。



「アリス様、手当終わりました」

アリスは包帯が巻かれたシドの腕を心配そうに見つめた。


「明日から一週間、1日2回目ここへ包帯を交換しに来るように。シドはもう戻って大丈夫だよ。アリス様は私が部屋までお送りしましょう。今、会場には戻らない方がいいでしょう。」

アリスはヘレナに言われるがまま、医務室を後にした。
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