白雨の騎士
アリスとシドは西の塔にある温室に来ていた。
ここにはあまり人は来ない。
アリスは中央にある噴水に腰掛けて水を手ですくった。
「ここに来ると落ち着く。」
そう言えば前にもここに来て、アリス様を抱きしめてしまったんだっけ。
シドは思い出して突然気まずくなった。
あれ以来、二人きりで話すのは初めてだ。
アリスを見ると何も気にしていなさそうだった。
次期国王として毎日仕事に追われているんだ。
あの時のことなんて何も気にしていないだろう。
「…シドはさ、結婚ってどう思う?」
「結婚ですか?」
「したいと思う?」
アリスの質問にシドは暫く考えた。
「…したいですね、いつかは。」
シドの答えにアリスは少し驚いたような顔をした。
「…結婚したいと思うんだ。ちょっと意外。」
「はい。でも、いつかはです。今はやっと近衛隊になれたのでこの仕事を全うしたいです。」
「…そう。私もいつかはすると思う。でも、シドと同じ今はまだ考えられない。けど周りからは結婚のことばかり急かされる。」
アリスは立ち上がり、温室に咲いている花を一輪手に取った。
「でも私はシドみたいに、仕事を全うしたいからじゃない。結婚そのものに興味が湧かないの。いつか、結婚したいって思う日がくるのかな。」
「そうですね…」
アリスの言葉にシドは暫く考えた。
「いつか、出来ると思います。」
「出来る?」
「はい、結婚したと思う人が、アリス様に出来ると思います。」