親友以上彼女未満
「あっ、俺がこの前言った事、忘れろよ。なかった事にするから。」

私は、目が点になった。

「何それ……なかった事にするって、どういう事?」

「ほら、下手に覚えていて、その好きな奴にいけなかったら、俺もいやじゃん?」

哲平は、のん気に笑っている。


何よ、それ。

何よ、それ!

私はそのせいで、どれだけ悩んだと思ってるんだよ!


「ヤダ。忘れらんない。」

我が侭な子供みたいに、言ってみた。

「えっ……」

二人が見つめ合っている中、お兄さんが唐揚げを持ってくる。


大好きな唐揚げなのに、手つけられない。

しかも流れる、この沈黙。

それを打ち破ったのは、私の方だった。

割り箸の方に置いてあった皿を取って、唐揚げを2、3個取ると哲平の前に置いた。

「大体、やるだけやっておいて、なかった事にするなんて、やり逃げもいいところだわ。」

「あのな。誰が、そんな事するかよ。」
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