霧の魔法
「この夏前にね。白血病で・・・、まだ、付き合って一ヶ月の時に発病してね。それから、たった二ヶ月もしないうちに死んじゃったんだ。」
「宙・・・。」
「俺、どうして言いかわかんなくて・・・、この旅はその彼女を忘れて新しい自分になれることを目標に来たんだけど。まだ混乱してる。」
「忘れなくていいよ。」
「え?」
「忘れなくていいんじゃない。ううん、むしろ忘れちゃダメだよ。」
「・・・・。」
「出会った時もいったけど、その人のことはもう、想い出。忘れる必要はないんだよ。その上で新しい自分の生活を築いていけばいいんだと思う。」
「・・・・。」
「じゃないと、その子もかわいそうだし・・・。」
そういうと葵の大きな瞳から涙がこぼれた。
「葵?どうして泣いてるの?」
「わかんない。ただ、宙に愛された彼女がうらやましい。そんなに悩んでくれる人がいてくれた彼女は幸せだったと思う。」
涙を流したまま葵は宙を見つめて言った。
「そうかな。幸せ感じてくれてたかな。」
「当たり前じゃん。幸せに決まってる。だから、今度は宙がしっかり自分を見つけて幸せにならなきゃ。その人のためにも。」
「そうか、そうだよね。俺が幸せにならなきゃ、だよね。」
「そう。宙が幸せになれば、きっとその人も幸せをもっと感じてくれるはずだよ。」
「そっか、うん。ありがとう。葵、俺、もう大丈夫だよ。」
「よかった。でもね。私は、大丈夫じゃない。」
「え?」
「宙・・・。」
そういうと葵は宙の身体に自分の身体を預け、その勢いでその場に倒れこんだ。
「葵?ちょっと。」
「宙・・・。」
葵がその涙に濡れた目でジッと宙の目を見つめて、そのまま唇を重ねてきた。
長いキスだった。
始め、なすがままだった宙も、自分から葵の身体を引き寄せて、強く抱きしめた。
葵の部屋の布団の上で二人は身体を重ねていた。
「葵、本当にいいの?」
「・・・・。」
静かに葵は頷いた。
そして、目を瞑り、宙に身体を預けた。
宙はおそるおそる葵の身体にふれていく。
葵のワンピースのボタンをぎこちなく一つずつはずしていく。
下着だけになった葵を見つめて自分も急いでTシャツを脱ぐ。
再び身体を重ね合わせ、唇を重ねながら葵の胸に手を当てる。
ドキドキと脈打つ心臓の鼓動を手のひらに感じる。
二人とも生れたままの姿になり、身体を重ね合わせて宙が葵の身体を開こうとした時
「待って。一つだけ聞いていい?」
突然の言葉に宙はドキッとして体の動きを止めた。
「あのね。私を抱いたら、その彼女のこと忘れる?」
「え?」
「私のこと愛してくれたら、その彼女のこと忘れちゃうかな?」
しばらく、宙は考えていた。
そして、応えた。
「いや、忘れないと思う。やっぱ忘れることはできない。だって、本当に愛していたから。」
「そう。よかった。いいよ。宙、来て。」
葵はそういうと、宙の首に手を回し、自分の胸に宙の顔を埋めるように優しく導いた。
宙は葵の中にそっと入り込んだ。
頭の芯がボーッとするような感覚を感じた。
葵の吐息だけがはっきりと耳の中に入ってくる。
でも、何も見えない暗闇の中にいるような錯覚を覚え、最後にすべてが光に包まれて真っ白な世界にいるような感覚が宙の頭の中いっぱいに広がった。
気がつくと自分の身体の下に葵が身体を小刻みに震わせながら呼吸を整えていた。
「宙、アイシテル。」
そういうと、葵は再び宙の首に手を回し、自分の胸に宙の頭を押し付けるように抱き寄せた。
宙の頭の中には、絵羽の顔が浮かんでいた。
『絵羽、俺は・・・。』
宙は心の中でつぶやいた。
ふと気がつくと、宙の腕の中で葵が寝息を立てていた。
宙自身少しまどろんでしまったようだ。
夏でもひんやりとした空気が暗い部屋の中に満たされていた。
眠っている葵を起こさないように、そっと腕を抜くと、服を着た。
しばらく眠っている葵を傍に座って見ていた。
「不思議だ。つい三日前に会ったばかりなのに、ずっと前から知っていたような。なんか出会うことが必然だった気もする。葵、君はいったい誰なんだい?」
スースーと寝息を立ててる葵は応えるはずもなかった。
「でも、おかげで少し吹っ切れてきた気がする。ただね。やっぱり、まだ絵羽のことは忘れられない。葵は、『忘れなくていい』って言ってくれたけど、俺の中では、まだ「想い出」にはできない。まだ、絵羽の死を受け入れられないでいるんだ。今日は俺が生れた日だけど、まだ、新しい自分には生まれ変われない。」
葵は深い夢の中にいるようで、ピクリとも動かない。
そんな葵の寝顔を見て、微笑んだ宙は、そっとほっぺたにキスをした。
「おやすみ、葵、明日、俺は帰るけど、また会いに来るね。」
そうつぶやくと、葵の家を後にした。
「宙・・・。」
「俺、どうして言いかわかんなくて・・・、この旅はその彼女を忘れて新しい自分になれることを目標に来たんだけど。まだ混乱してる。」
「忘れなくていいよ。」
「え?」
「忘れなくていいんじゃない。ううん、むしろ忘れちゃダメだよ。」
「・・・・。」
「出会った時もいったけど、その人のことはもう、想い出。忘れる必要はないんだよ。その上で新しい自分の生活を築いていけばいいんだと思う。」
「・・・・。」
「じゃないと、その子もかわいそうだし・・・。」
そういうと葵の大きな瞳から涙がこぼれた。
「葵?どうして泣いてるの?」
「わかんない。ただ、宙に愛された彼女がうらやましい。そんなに悩んでくれる人がいてくれた彼女は幸せだったと思う。」
涙を流したまま葵は宙を見つめて言った。
「そうかな。幸せ感じてくれてたかな。」
「当たり前じゃん。幸せに決まってる。だから、今度は宙がしっかり自分を見つけて幸せにならなきゃ。その人のためにも。」
「そうか、そうだよね。俺が幸せにならなきゃ、だよね。」
「そう。宙が幸せになれば、きっとその人も幸せをもっと感じてくれるはずだよ。」
「そっか、うん。ありがとう。葵、俺、もう大丈夫だよ。」
「よかった。でもね。私は、大丈夫じゃない。」
「え?」
「宙・・・。」
そういうと葵は宙の身体に自分の身体を預け、その勢いでその場に倒れこんだ。
「葵?ちょっと。」
「宙・・・。」
葵がその涙に濡れた目でジッと宙の目を見つめて、そのまま唇を重ねてきた。
長いキスだった。
始め、なすがままだった宙も、自分から葵の身体を引き寄せて、強く抱きしめた。
葵の部屋の布団の上で二人は身体を重ねていた。
「葵、本当にいいの?」
「・・・・。」
静かに葵は頷いた。
そして、目を瞑り、宙に身体を預けた。
宙はおそるおそる葵の身体にふれていく。
葵のワンピースのボタンをぎこちなく一つずつはずしていく。
下着だけになった葵を見つめて自分も急いでTシャツを脱ぐ。
再び身体を重ね合わせ、唇を重ねながら葵の胸に手を当てる。
ドキドキと脈打つ心臓の鼓動を手のひらに感じる。
二人とも生れたままの姿になり、身体を重ね合わせて宙が葵の身体を開こうとした時
「待って。一つだけ聞いていい?」
突然の言葉に宙はドキッとして体の動きを止めた。
「あのね。私を抱いたら、その彼女のこと忘れる?」
「え?」
「私のこと愛してくれたら、その彼女のこと忘れちゃうかな?」
しばらく、宙は考えていた。
そして、応えた。
「いや、忘れないと思う。やっぱ忘れることはできない。だって、本当に愛していたから。」
「そう。よかった。いいよ。宙、来て。」
葵はそういうと、宙の首に手を回し、自分の胸に宙の顔を埋めるように優しく導いた。
宙は葵の中にそっと入り込んだ。
頭の芯がボーッとするような感覚を感じた。
葵の吐息だけがはっきりと耳の中に入ってくる。
でも、何も見えない暗闇の中にいるような錯覚を覚え、最後にすべてが光に包まれて真っ白な世界にいるような感覚が宙の頭の中いっぱいに広がった。
気がつくと自分の身体の下に葵が身体を小刻みに震わせながら呼吸を整えていた。
「宙、アイシテル。」
そういうと、葵は再び宙の首に手を回し、自分の胸に宙の頭を押し付けるように抱き寄せた。
宙の頭の中には、絵羽の顔が浮かんでいた。
『絵羽、俺は・・・。』
宙は心の中でつぶやいた。
ふと気がつくと、宙の腕の中で葵が寝息を立てていた。
宙自身少しまどろんでしまったようだ。
夏でもひんやりとした空気が暗い部屋の中に満たされていた。
眠っている葵を起こさないように、そっと腕を抜くと、服を着た。
しばらく眠っている葵を傍に座って見ていた。
「不思議だ。つい三日前に会ったばかりなのに、ずっと前から知っていたような。なんか出会うことが必然だった気もする。葵、君はいったい誰なんだい?」
スースーと寝息を立ててる葵は応えるはずもなかった。
「でも、おかげで少し吹っ切れてきた気がする。ただね。やっぱり、まだ絵羽のことは忘れられない。葵は、『忘れなくていい』って言ってくれたけど、俺の中では、まだ「想い出」にはできない。まだ、絵羽の死を受け入れられないでいるんだ。今日は俺が生れた日だけど、まだ、新しい自分には生まれ変われない。」
葵は深い夢の中にいるようで、ピクリとも動かない。
そんな葵の寝顔を見て、微笑んだ宙は、そっとほっぺたにキスをした。
「おやすみ、葵、明日、俺は帰るけど、また会いに来るね。」
そうつぶやくと、葵の家を後にした。