霧の魔法
「おい!宙」

 美樹生が追いかけてきた。

「どうだった?なんか最後笑顔だったじゃん。絵羽ちゃんも。」
「ふふふ、もう一度会う約束ゲットしたぜ!」

「マジで!やったな宙、うれしいよ。俺は幼馴染として。」

 そういって美樹生は腕で涙を拭くマネをした。

「ふざけてんじゃねぇよ。でも、よかったぁ。また、絵羽ちゃんと会える!」
「良かったなぁ、宙。くっそーうらやましいぜ。ほんと宙が言った通り、かわいいな、絵羽ちゃんて。俺も惚れそう。」

「おい、俺が目をつけたんだからな。美樹生は邪魔すんなよ。」
「えへへ、恋は自由さ、俺と会ったら絵羽ちゃんが俺のほうに気を向けるかも。」

「美樹生!」

 そう言って美樹生の首に手を回し絞めるマネをした。

「あははは、かんべん、かんべん、おまえの幸せをぶち壊すわけないだろ。おまえの幸せは俺の幸せだからなぁ。」
「ほんとかよ?まぁ、いいや。とにかくこれからだ。」

「そうそう、これからだ。せいぜい振られないように気をつけてな。」
「美樹生、おまえ俺の幸せ願ってるなんて嘘だろ?」

「ばれた?」
「この野郎!」

「あはははは。」

 帰りのなだらかな坂道を追い駆けっこをしながら帰る二人を丸く大きな月が見ていた。

 
 それから、日に何度か宙は絵羽とメールのやり取りをするようになった。

お互いの学校のことや家のことなどありふれた日常のことが主だったが、本当は宙にとって一番聞きたかったのは彼氏のことだった。

 家に帰って夕食を済ませた頃、思い切って絵羽に彼氏のことをメールしてみた。

 《話変わるけど、その後どう?彼氏とは?》

 ほどなく返信が返ってきた。

 《ビミョウ。あれから校内で会ってもなんかよそよそしくて(-_-;)》

 その返信にかわいそうと思いながら片方でガッツポーズをとっている自分がいた。

 《そうなんだ。でも、はっきりさせなくていいの?》
 《うん。それはそうなんだけど、なんかメールとかでするのもなんだし、会ってちゃんと話したいんだけど。なんかチャンス逃しちゃって。》

 《とりあえずメールでアポ取って話す日を決めるとか。》
 《そうだよね。それが一番いいかな。うん。そうしてみる。ありがとうね。宙》

 《いや、お礼言われるのも変だけど。がんばって!俺が応援してるから!(^^)!》
 《ありがとう。んじゃ、メールしてみるね。また連絡する。おやすみ!》

 そういって絵羽からのメールが途切れた。

 その日はなんだか遅くまで眠れなかった。

ふと外をみると絵羽と出会った日と同じように、外には霧が立ち込めていた。
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