10年の日記

6.現実③


大阪。


私から見ればあの大阪が全ての発端だった。


あの時、家族全員で大阪に行く必要があった。


あの建物はアメリカ領事館。アメリカに行くためのビザを発行して貰いに行ったらしい。

もちろん私はこの時アメリカに引っ越すなんてことはいつもの通り熱を出さないようにという母の配慮により全く聞かされていなかった。


おかげで、このことは私にとって暇だったということ以外はあまり記憶に残っていない。
本音を言うなら、顔を見せたかどうかも定かではない…

ただ唯一覚えていることは、あの時父に尋ねたこと。


「どうして英語を喋っているの?」

「それはね、この建物は日本にあるけど、建物の中に入ってしまえばあの中はアメリカだからだよ。」


あの時はどういう意味か全然わからなかったけれど、大きくなってからあれは領事館だったんだよって聞かされた時には色んな意味で妙に納得してしまった。
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