忘れ咲き
彼女と付き合って半年、それは突然の宣告だった。

突然過ぎて現実なのか、夢なのか、その二つの区別がつかなかった。

「普通に付き合ってた日よりも、こっちのほうが長くなっちゃったね」

彼女は強くなどない。

ほんの些細なことでも、よく涙を流していた姿が浮かぶ。

それが、ベッドの上だと流れることはなかった。

「最後に約束して」

寂しそうでありながら、優しい瞳の彼女が呟くように言った。

『最後』

彼女の口から、その言葉を聞くと胸が締めつけられるように痛かった。

「私が死んだら、早く新しい好きな女の子を見つけて。そして、その子と幸せになって」

全くその通りだと思う。

死んだ女性をいつまでも思うほど、僕はお人好しではない。

「・・・分かったよ」

彼女の手をそっと握った。

「ありがとう」

それが彼女の最後の温もりだった。
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