偽物の恋をきみにあげる【完】
私が大雅を探している間も、コタローくんからは毎日ではないが、DMが届いていた。

どうしても大雅と連絡を取りたい私は、いっそコタローくんにズバリ訊いてしまおうか、と何度も思った。

でも、音信不通の大雅が、連絡をくれるコタローくんと同一人物というのは、さすがにおかしな話だ。

コタローくん=大雅の説は、ここに来てかなり怪しくなって来たのだ。

それに、コタローくんのメールも、今までとは違っていた。

まず、時間。

夜の11時前後ではなく朝や日中だ。

そして、くれるメール自体も違う。

今までみたいにやり取りではなく、ただ送られてくるだけ。

『つーちゃん、おはよう。今日はかなり冷えるらしいです。風邪引かないようにね。ではでは』

『つーちゃん、こんにちは^^ 城崎さんの短編、優秀作品に選ばれてましたね! さすがだなあ』

もらったDMに返信をしても、かなり忙しいのかその日には返って来ない。

そんな調子だから、コタローくん本人に大雅のことを確認しようにも、彼と会話ができない。

週末、今更新年会と歓迎会を兼ねた、企画部の飲み会があった。

全然気乗りしないのに、強制参加。

誰と何を話したかなんて全く覚えていない。作り笑いし過ぎて疲れただけだ。


大雅に会いたい。

コタローくんと話したい。

幸せになれた筈だったのに、気づけば私はひとりぼっちだ。
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