偽物の恋をきみにあげる【完】
*****
土曜日、産婦人科に行ったら、驚くほど混んでいた。
待合席を埋める殆どが、もうお腹が大きくなった妊婦さんだ。
旦那さんが付き添っている家庭もあった。
もちろん私も妊婦だ。
でもまだ、何の実感もない。
その上、子供の父親は音信不通。
産むのかどうかも決まっていない。
周りのみんながとても幸せそうに見えて、なんだか泣きたくなった。
やっと呼ばれて診察室に入り、残念な格好をさせられて、超音波だかエコーだかの検査をした。
「これが胎児だけど、まだ小さいね」
「これが……」
赤ちゃんが映っている写真をもらった。
とても小さな影だった。
これが、私と大雅の赤ちゃん。
私のお腹に、大雅の赤ちゃんがいる……。
「彼氏とちゃんと相談してみてね」
「……わかりました」
「もし産まないなら、今はまだ早くて手術出来ないから、2週間後くらいね」
念のために手術費用やらの説明を聞いて、病院をあとにした。
「産みたいな…」
帰り道、もらった写真を見ていたら、無意識に声に出していた。
産みたい、でも……大雅がいない。
──その時。
私は、急に思い出してしまった。
『瑠奈とは結婚できねーな』
……ああ、そうか。
大雅は、私とずっと一緒にいるつもりなんて、全くなかったのだ。
土曜日、産婦人科に行ったら、驚くほど混んでいた。
待合席を埋める殆どが、もうお腹が大きくなった妊婦さんだ。
旦那さんが付き添っている家庭もあった。
もちろん私も妊婦だ。
でもまだ、何の実感もない。
その上、子供の父親は音信不通。
産むのかどうかも決まっていない。
周りのみんながとても幸せそうに見えて、なんだか泣きたくなった。
やっと呼ばれて診察室に入り、残念な格好をさせられて、超音波だかエコーだかの検査をした。
「これが胎児だけど、まだ小さいね」
「これが……」
赤ちゃんが映っている写真をもらった。
とても小さな影だった。
これが、私と大雅の赤ちゃん。
私のお腹に、大雅の赤ちゃんがいる……。
「彼氏とちゃんと相談してみてね」
「……わかりました」
「もし産まないなら、今はまだ早くて手術出来ないから、2週間後くらいね」
念のために手術費用やらの説明を聞いて、病院をあとにした。
「産みたいな…」
帰り道、もらった写真を見ていたら、無意識に声に出していた。
産みたい、でも……大雅がいない。
──その時。
私は、急に思い出してしまった。
『瑠奈とは結婚できねーな』
……ああ、そうか。
大雅は、私とずっと一緒にいるつもりなんて、全くなかったのだ。