偽物の恋をきみにあげる【完】
「え?」
大雅が、働いていない?
そんなの初耳だ。
「え、知らない? やべ、マズかったかな」
「あの、詳しく教えてください」
「確か半年くらい前かな? 仕事やめたってグループトークで。いよいよ大作家になる時が来た、ってアホなこと言ってたよ」
「……大作家?」
「あ、俺ら大学の時、文藝部だったんだよね。……ってわかる? 小説書くサークル」
「大雅が……文藝部!?」
「うん。大雅、ああ見えてすごいいい文章書くんだよね。ちゃんとペンネームもあってさ。なんだっけなー。確か、馬じゃなくて、熊、いや獅子……」
「…………とら?」
私が思わず呟くと、彼は「あーそれそれ! 虎だ!」と声を上げた。
……そっか。
やっぱり、そうだったのか。
駅前に着いて、私達は足を止めた。
「あの、もしよかったら、大雅に連絡してもらえますか? メッセージでいいんで」
「いいよ、何て打てばいい?」
「そうですね……『今夜は月が綺麗だから、あなたを掴まえに行きます』って」
「随分とロマンチックだね。いいよ、待ってて」
大雅の友人はケータイを取り出すと、すぐにメッセージを送ってくれた。
「……あ、もう返事来たよ。やっぱ暇人じゃん」
「あの、なんて?」
「『じゃあお待ちしてますよ』だって」
お待ちしてますよ? ……散々無視しておいて、いい度胸だ。
──でも。
やっと大雅を掴まえた。
大雅が、働いていない?
そんなの初耳だ。
「え、知らない? やべ、マズかったかな」
「あの、詳しく教えてください」
「確か半年くらい前かな? 仕事やめたってグループトークで。いよいよ大作家になる時が来た、ってアホなこと言ってたよ」
「……大作家?」
「あ、俺ら大学の時、文藝部だったんだよね。……ってわかる? 小説書くサークル」
「大雅が……文藝部!?」
「うん。大雅、ああ見えてすごいいい文章書くんだよね。ちゃんとペンネームもあってさ。なんだっけなー。確か、馬じゃなくて、熊、いや獅子……」
「…………とら?」
私が思わず呟くと、彼は「あーそれそれ! 虎だ!」と声を上げた。
……そっか。
やっぱり、そうだったのか。
駅前に着いて、私達は足を止めた。
「あの、もしよかったら、大雅に連絡してもらえますか? メッセージでいいんで」
「いいよ、何て打てばいい?」
「そうですね……『今夜は月が綺麗だから、あなたを掴まえに行きます』って」
「随分とロマンチックだね。いいよ、待ってて」
大雅の友人はケータイを取り出すと、すぐにメッセージを送ってくれた。
「……あ、もう返事来たよ。やっぱ暇人じゃん」
「あの、なんて?」
「『じゃあお待ちしてますよ』だって」
お待ちしてますよ? ……散々無視しておいて、いい度胸だ。
──でも。
やっと大雅を掴まえた。