偽物の恋をきみにあげる【完】
*****

部屋着に着替え、すぐにパソコンの前に座った。

ダイレクトメールの画面を開き、一度深呼吸してから、キーボードに両手を添えた。

カチャカチャという小さな音が、静かな部屋にやけに響く。

「コタローくん、こんばんは」

『つーちゃん、こんばんは。今夜は月がとても綺麗ですね』

驚くほどのスピードで、返信が来た。

今までの忙しいフリは本当に何だったのか。

「うん、そうだね。だから、掴まえに来た」

『うん、待ってた』

もう一度深く息を吸って、ゆっくりゆっくりと吐き出す。

「大雅」

私がそう打つと、少しの間が空いた。



『久しぶり 元気にしてた? かわい子ちゃん 』



表示されたそのメッセージを見た瞬間、思わず目から涙が溢れた。

なんでこんな時まで五七五なの!

しかも字余りだし!

嬉しいのか腹が立つのか、よくわからない。

ただ、胸がいっぱいだった。

涙を拭って、キーボードを打つ。

「やっぱり、大雅だったんだね」

『そうだよ、瑠奈。てか気づくのおせーし』

「大雅、なんで」

『ん?』

「なんで」

聞きたいことが山ほどあり過ぎて、何から聞けばいいのかわからない。

『瑠奈は何が知りたいの?』

「なにもかも全部」

『んじゃ順番に話すよ。すげー長くなるけど』

「全然いい」

たとえ永遠に終わらなくたっていい。

大雅と、こうして話せるのなら。

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