偽物の恋をきみにあげる【完】
大雅がトークアプリで電話をしてきたのだ。

私はすぐに通話ボタンを押した。

「……はい」

『はろー、愛しの瑠奈ちゃん』

久しぶりに聞く大雅の声に、またじわっと涙が浮かんだ。

「……バカ大雅」

『はは。……ね、赤ちゃん。まじ?』

「うん」

『俺の子供?』

「他に誰がいるの」

『そっかあ……なんか、めちゃくちゃ嬉しいわ』

大雅はそう言って鼻を啜った。

……あれ?

もしかして、大雅……泣いてる?

「あのね、私、産みたい」

『……うん、ありがと』

答えた声は掠れていて、やっぱり泣いているように聞こえた。

「産んでもいいかな? あ、別に責任取れとか」

『瑠奈』

私の言葉を、大雅が遮った。

「なに?」

『でも俺……その子のパパになれねーかも』

ズキン、と心臓が傷んだ。

そんなのはわかっていたのに。

「……あはは。だから結婚はいいって。私とは結婚できないって言ってたもんね」

『……違うんだよ、瑠奈』

「何が違うの?」

『……お前だから、結婚できない、とか…………そんなんじゃ、なくてさあ……』

大雅の声は、嗚咽混じりだった。

「大雅……なんで、泣いてるの?」

『……絶対話さない……つもりだった、けど。言わなきゃだな……』

大雅は、ズズッと大きく鼻を啜ると、しばらくの間押し黙った。
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