偽物の恋をきみにあげる【完】
そこから先の話は、ちゃんと聞いていたのに、上手く理解できなかった。
大雅の声が、右耳から左耳へただ通り抜けている気がした。
言葉としては理解できるのに、ひとつとしてリアルじゃなくて、まるで何かの物語を聞いているようだった。
『余命1年』
私と大雅が再会する少し前、彼が医師から宣告された人生の残り時間は、1年だった。
『胃の調子悪くて、あと背中痛くて。でもそんな大したことなかったんだよ。ちょっと医者行っただけなのに、死の宣告とかまじウケる』
大雅は軽く笑いながら言った。
『死ぬとかそんなの、全然実感なかった。だって普通に生活できてたから』
入院して、ほぼ延命目的の治療を受けるか、それとも、ギリギリまで自宅から通院するのか。
『まずは仕事を辞めて、それからゆっくり考えようと思った。まだ家族にも話してなかったし』
そして、最後の出勤日、職場で開いてくれた送別会の帰り道。
『瑠奈に再会しちゃったんだよね』
半年だけ恋愛ゴッコしよう、そう言ったのは、半年くらいなら大丈夫だろうと思ったから。
体がダメになっても、メールで話すくらいはできるだろうから、虎太朗が残るように時期をズラした。
『それに、虎太朗っていう別の存在がいた方が……瑠奈が本気にならなくて済むかなって』
大雅はそう説明した。
大雅の声が、右耳から左耳へただ通り抜けている気がした。
言葉としては理解できるのに、ひとつとしてリアルじゃなくて、まるで何かの物語を聞いているようだった。
『余命1年』
私と大雅が再会する少し前、彼が医師から宣告された人生の残り時間は、1年だった。
『胃の調子悪くて、あと背中痛くて。でもそんな大したことなかったんだよ。ちょっと医者行っただけなのに、死の宣告とかまじウケる』
大雅は軽く笑いながら言った。
『死ぬとかそんなの、全然実感なかった。だって普通に生活できてたから』
入院して、ほぼ延命目的の治療を受けるか、それとも、ギリギリまで自宅から通院するのか。
『まずは仕事を辞めて、それからゆっくり考えようと思った。まだ家族にも話してなかったし』
そして、最後の出勤日、職場で開いてくれた送別会の帰り道。
『瑠奈に再会しちゃったんだよね』
半年だけ恋愛ゴッコしよう、そう言ったのは、半年くらいなら大丈夫だろうと思ったから。
体がダメになっても、メールで話すくらいはできるだろうから、虎太朗が残るように時期をズラした。
『それに、虎太朗っていう別の存在がいた方が……瑠奈が本気にならなくて済むかなって』
大雅はそう説明した。