偽物の恋をきみにあげる【完】
入院している病院は、何度聞いてもどうしても教えてくれなかった。

『そろそろ消灯だから部屋戻るわ』

また連絡する、と大雅は言って電話を切った。

ツー、ツー、ツー…………。

私は、もう切れてしまった電話を握りしめたまま、長い間、ただ呆然としていた。

……大雅が、死ぬ?

とても簡単な、小学生でもわかるたった2文字のその現実を、私はちゃんと受け入れられない。


胸が苦しくて、うまく呼吸ができない。

まるで暗い海の底で溺れているよう。


──これは、本当に現実?

全部、偽物だったらいいのに。


「助けて……」


気づいたら、そう声に出していた。

助けて、誰でもいいから。

お願い、誰が、大雅を助けて。

この子のパパを、奪わないで。
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