偽物の恋をきみにあげる【完】
*****

大雅の真実を知っても、私の日常は当たり前に続く。

夜寝たら、当たり前に朝が来る。

でも、大雅は違うのだ。

明日、世界が終わるかもしれない。

眠ったら、朝が来ないかもしれない。

大雅は、一体どんな気持ちで毎晩眠りにつくのだろう。

どんな気持ちで、朝を迎えるのだろう。

……大雅の世界が終わってしまうかもしれないのに、私は何もできない。


大雅と電話で話した次の日から、私は体調不良で仕事を休み始めた。

食欲は全くないし、吐き気がする。

つわりというヤツかもしれない。

胸がとても張って、痛くて仕方ない。

下腹も痛いし、ポコポコと何かが泡立つような変な感じがあったし、やけに尿が近くなった。

その上貧血も酷くて、とても外に出られる状況ではなかった。

仕方なく、私はずっとベッドの中にいた。

……この世界に、大雅はまだ、ちゃんと『存在』しているのだろうか。

そう思うと怖くて怖くてたまらなくて、でも怖いから確かめることもできない。

私は食事すら取らず、まるで抜け殻みたいに転がっていた。

スマホを握りしめ、ただひたすら大雅からの連絡を待ち続けた。

そして、仕事にも行けないまま、大雅から連絡もないまま、気づけば日曜日だった。
< 172 / 216 >

この作品をシェア

pagetop