偽物の恋をきみにあげる【完】
『月ちゃん……』

「怖くて気が狂いそう! ねえ、もしかしたら、大雅、もういなくなってたらどうしよう。怖いよ、逃げたい」

『月ちゃんダメだよ。しっかりして』

「しっかりなんてムリだよ。もうイヤ」

気持ちを遠慮なく撒き散らかした私に、サユユはもう一度『しっかりして』と言った。

『月ちゃんは「お母さん」でしょ?』

お母さん。

その言葉に、私ははっと息を飲んだ。

そうだ、私は。

『ねえ月ちゃん、ちゃんとゴハン食べてる? 』

何をやっていたのだろう。

『月ちゃんがゴハン食べないと、赤ちゃんもゴハン食べれないんだよ?』


──ごめんなさい。

大雅の赤ちゃんを産みたいと言ったくせに。

本当に大大大馬鹿だ。


『本当に辛いと思う。でも……大雅くんの赤ちゃん、産むんでしょ? だったら、しっかりしなきゃ』

「うん」

『何にもできないなんて言わないで』

「うん」

『月ちゃんは月ちゃんのできることをしよ?』

私にできること……。

そうだ。

この子の母親になれるのは、私だけだ。

「……うん。サユユ、ありがとう」
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