偽物の恋をきみにあげる【完】
Last Chapter:本物の恋をきみにあげる
「なにこれ、ウソばっかじゃん」
私はそう言って口を尖らせた。
「ビール日課じゃないし。たまにだもん。あと、執筆はケータイ派だし。あと喜多野課長に見とれたりしてないもん。それと私、こんなにアンアン喘いでないもんっ」
彼は何も言わず、楽しげに微笑んでいる。
「てゆーか名前。よく考えたよね、こんな漢字。でも漢字だけ変えたって意味ないでしょ。フルネームまんまだし。それに」
それに後半なんか、嘘だらけだ。
旅行から帰ってきて、大河が音信不通になって、妊娠して、コタローくんが大河だって気づいて……そこまではいい。
でもそこから先は、嘘だらけ。
この物語では、私は病名も入院先も知らないまま大河を待っているけれど、実際は違うのだ。
私はちゃんと彼から病名を聞かされたし、入院先も教わって毎日毎日通ったもの。
それに、未婚の母になるかも、なんてくだりがあるが、私と大河は彼の入院中に、ちゃんと入籍しているのだ。
「もう、脚色し過ぎ」
それに、大河は手術なんてしていない。
それに──。
「……あなたはベビーに会う前に、逝ってしまったでしょ?」
写真の中の彼にそう語りかければ、彼が「あれ、そうだっけ?」ととぼけた顔で笑った気がした。
私はそう言って口を尖らせた。
「ビール日課じゃないし。たまにだもん。あと、執筆はケータイ派だし。あと喜多野課長に見とれたりしてないもん。それと私、こんなにアンアン喘いでないもんっ」
彼は何も言わず、楽しげに微笑んでいる。
「てゆーか名前。よく考えたよね、こんな漢字。でも漢字だけ変えたって意味ないでしょ。フルネームまんまだし。それに」
それに後半なんか、嘘だらけだ。
旅行から帰ってきて、大河が音信不通になって、妊娠して、コタローくんが大河だって気づいて……そこまではいい。
でもそこから先は、嘘だらけ。
この物語では、私は病名も入院先も知らないまま大河を待っているけれど、実際は違うのだ。
私はちゃんと彼から病名を聞かされたし、入院先も教わって毎日毎日通ったもの。
それに、未婚の母になるかも、なんてくだりがあるが、私と大河は彼の入院中に、ちゃんと入籍しているのだ。
「もう、脚色し過ぎ」
それに、大河は手術なんてしていない。
それに──。
「……あなたはベビーに会う前に、逝ってしまったでしょ?」
写真の中の彼にそう語りかければ、彼が「あれ、そうだっけ?」ととぼけた顔で笑った気がした。