偽物の恋をきみにあげる【完】
ソファーに戻り、その赤い表紙に目を落とす。
タイトルの下には、桂浜の龍馬像の前で撮ったツーショット写真が印刷されている。
もう少しマシなものはなかったのだろうか。
ちょっとピンボケしているし、何より私の顔がまる過ぎる。
使う前に小顔加工してくれればよかったのに。
自分ばっかイケメンに写っちゃって、ズルい。
「ねえ、虎太朗。酷いパパだよねー」
すっかり大きくなったお腹に、私は語りかけた。
もうすぐ、私達のベビーが生まれる。
男の子だと言われたので、名前は自動的に『虎太朗』に決まった。
大河が勝手に決めたのだ。
勝手に決めて、なのにその名前を呼んであげることもせずに勝手に逝った。
つくづく、嘘つきで自分勝手なパパだ。
「タイトルまでウソなんだから」
私はマジックの蓋を開けた。
『偽物の恋をきみにあげる』
──ねえ、大河。
私はあなたから、偽物なんてもらってない。
全部全部、本物だった。
私はあなたと、本物の恋しかしてないよ。
タイトルの「偽」の文字の上から、油性ペンで力強く「本」という文字を書いた。
ありがとう、大河。
私と本物の恋をしてくれて、ありがとう。
タイトルの下には、桂浜の龍馬像の前で撮ったツーショット写真が印刷されている。
もう少しマシなものはなかったのだろうか。
ちょっとピンボケしているし、何より私の顔がまる過ぎる。
使う前に小顔加工してくれればよかったのに。
自分ばっかイケメンに写っちゃって、ズルい。
「ねえ、虎太朗。酷いパパだよねー」
すっかり大きくなったお腹に、私は語りかけた。
もうすぐ、私達のベビーが生まれる。
男の子だと言われたので、名前は自動的に『虎太朗』に決まった。
大河が勝手に決めたのだ。
勝手に決めて、なのにその名前を呼んであげることもせずに勝手に逝った。
つくづく、嘘つきで自分勝手なパパだ。
「タイトルまでウソなんだから」
私はマジックの蓋を開けた。
『偽物の恋をきみにあげる』
──ねえ、大河。
私はあなたから、偽物なんてもらってない。
全部全部、本物だった。
私はあなたと、本物の恋しかしてないよ。
タイトルの「偽」の文字の上から、油性ペンで力強く「本」という文字を書いた。
ありがとう、大河。
私と本物の恋をしてくれて、ありがとう。