偽物の恋をきみにあげる【完】
最後のおまけ:3月9日
「ねえ、明日、俺とデートしない?」
俺の言葉に、目の前の女はぽかんと口を開けた。
「え……アンタ、大丈夫?」
「大丈夫ってなにが?」
「ついに、頭わいちゃった?」
まるい顔が、心配そうに俺を覗き込む。
「わいてねーし。てか『ついに』ってなんだよ、まじ失礼だな」
「いや、童貞拗らせて、ついにマザコンになったのかと」
「……はあー」
思わず深いため息をついた。
平然と下品な言葉を吐くこの女は、残念ながら俺の母親だ。
「マザコンじゃねーし。あと、中2で童貞とか普通だし。てか息子の前で童貞とか言ってんなし」
「え、じゃあなんでママとデートなの?」
「……明日、3月9日だから」
俺がボソッと答えたら、母親の目が大きく大きく見開いた。