偽物の恋をきみにあげる【完】
初恋と言えば、私が小説を書き始めたのは、大雅に初恋をした中学生の頃だ。
恋というものを知ったばかりの私は、両思いのひたすら甘い絵空事ばかりを、大学ノートにひたすら書きなぐっていた。
何冊にも及ぶノートは今でも大切に取っておいてあるが、たまにふと読み返してみると、そのあまりの夢物語っぷりにいつも吹き出してしまう。
当時の私の将来の夢は『小説家になりたい』だった。
恥ずかしげもなく卒業文集にまで書いた。
あんなに拙いただの妄想日記みたいなものを書いておきながら、随分大それている。
でも、さすがに低クオリティの自覚があったので、小説を書いていることは公言していたものの、「完結したら読んでね」なんて言って逃げていた。
そういえば、大雅に再会してほどなくした頃、彼が唐突に、
「瑠奈ってさ、まだ小説書いてる?」
と尋ねてきたことがあった。
「あーうん。まあ時々」
「そっか、よかった」
大雅は安心したように笑った。
何が「よかった」なのかわからない。
でも、小説のことを、当時の私のことを、初恋の人が覚えていてくれていたというのはなんとも嬉しいものだ。
恋というものを知ったばかりの私は、両思いのひたすら甘い絵空事ばかりを、大学ノートにひたすら書きなぐっていた。
何冊にも及ぶノートは今でも大切に取っておいてあるが、たまにふと読み返してみると、そのあまりの夢物語っぷりにいつも吹き出してしまう。
当時の私の将来の夢は『小説家になりたい』だった。
恥ずかしげもなく卒業文集にまで書いた。
あんなに拙いただの妄想日記みたいなものを書いておきながら、随分大それている。
でも、さすがに低クオリティの自覚があったので、小説を書いていることは公言していたものの、「完結したら読んでね」なんて言って逃げていた。
そういえば、大雅に再会してほどなくした頃、彼が唐突に、
「瑠奈ってさ、まだ小説書いてる?」
と尋ねてきたことがあった。
「あーうん。まあ時々」
「そっか、よかった」
大雅は安心したように笑った。
何が「よかった」なのかわからない。
でも、小説のことを、当時の私のことを、初恋の人が覚えていてくれていたというのはなんとも嬉しいものだ。