偽物の恋をきみにあげる【完】
「個人的って、自分の世界が終わるってこと?」

『うん。例えば、大切な人を失うのも、その人にとっては世界の終わりかもしれないし』

「おー、それいいね!そのネタ、パクってもいい?笑」

『パクり、ダメ! 絶対!』

「大賞取ったら賞金半分あげるからw」

ウミちゃんとそんなやり取りをしながら、そういえば大雅も「世界が終わる」という言葉を使っていたな、と不意に思い出した。

もしも明日世界が終わるなら、俺は瑠奈のカレーが食べたいな。

あの時は「瑠奈のカレー」の方が気になって気にとめなかったが、今考えてみると、ずいぶんロマンチックな表現だなあと思う。

コタローくんの「世界が終わるなら恋がしたい」には負けるけれど。

世界が終わる、私はそんなことを真面目に考えたことはない。

だって今の所、毎日当たり前のように明日が来るのだ。

今日、夕飯を食べたら自宅に戻って、コタローくんとメールして、寝て起きたら4日。

あーあ、今日からまた仕事か、と溜め息をつきながら、渋々家を出るのだ。

当たり前に私の世界は続く。

でも、もしもその世界が終わるなら。

私は最後に、何を望むのだろう。
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