無愛想な王子は理想の花嫁に求婚する
「声が出ない?
なるほど、だからお喋りではない女性か……」

小さく呟くと、ティアナの後ろに立っている宰相が自慢気に微笑んでいた。
それを一瞥すると、アレクシスは再びティアナに視線を移す。

「ティアナ、俺は唇の動きが読める。
筆談は必要ない」

その言葉にティアナは目を丸くすると、すぐにふわりと微笑み、ありがとうございます。と唇を動かした。

その柔らかい笑顔を見た瞬間、とくん、と心臓が跳ねた気がして思わずアレクシスは心臓辺りを握るが、それ以上なんの反応もない。
気のせいかと思い直し、ティアナを見つめる。

「今からティアナと話をする。
宰相は黙っていろ」

「畏まりました」

「ティアナ、俺は強い香水の香りも、厚く塗った化粧も、見せびらかすような動きにくいドレスも、これでもかとつけられた装飾品も、お喋りが止まらない口も、明らかに地位目的の媚び方も好かない。
ティアナにはそれが一切ないと断言できるか?」

その言葉にティアナは暫し考えるように目を閉じる。
暫くして目を開けると、ゆっくりと唇を動かした。
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