無愛想な王子は理想の花嫁に求婚する
「ティアナ!!」

話し終え謁見の間を出て中庭で月を見ていたティアナは呼ばれた声にゆっくり振り返る。
真剣な瞳でこっちを見つめてくるアレクシスは大きな歩幅で歩み寄ると、強い力で腕を掴んできた。

「さっきの計画、失敗すればどうなるのかわかっているのか!?」

初めて感情を顕に声を荒げるアレクシスにティアナは眉を下げた。

【殿下、先程みなさんも話を聞いてこれが最善の方法だとおっしゃったではありませんか】

「それでも、ティアナが危険すぎる」

【殿下、私は……】

「ティアナはただの婚約者候補だったはずだ。
何故ブリュッケル公爵家の問題に巻き込まれなければならない……」

【……ブリュッケル公爵家が何よりも手に入れたかったのが、婚約者……果ては王妃の座だったからです】

「それなら、ティアナを……」

【候補から外しますか?
それで違う女性を選んでも同じこと、クリスティーネ様はまたブリュッケル公爵に“おねだり”するでしょう。
クリスティーネ様が選ばれない限り……】

「それは……」

腕を掴む力が緩み、アレクシスがティアナの肩に頭を乗せるとティアナはそっとその頭を撫でた。

【ブリュッケル公爵家の悪事は断罪しなければなりません。
弱い者を駒のように使うクリスティーネ様を私は許せません。
殿下、国と民と私のためにどうかお力をお貸しください】

「……ティアナがここまで芯の強い女性だと思わなかった」

【理想とは違いましたか?】

「いや……理想通りだ」

顔を近づけて微笑み合うと、二人どちらからともなく空に上る月を見た。
明るいその輝きに計画の成功を願わずにはいられなかった。
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