無愛想な王子は理想の花嫁に求婚する
走っては休み、走っては休みを何度か繰り返し、次の休憩でカミラや近くにいた動物達と昼食を食べていた。

【王都まであとどれくらいかな?】

【うーん。
あと一日はかかっちゃうんじゃないかな?】

【一日かぁ……】

遠いな、王都……。と服の中からネックレスを取り出し目を細めて見つめる。
出発するときにアレクシスから貰った御守りはティアナを励ますかのように太陽の光を浴びて輝いていた。
暫くそのまま見つめていると突然影が落ち、目を見開き空を仰ぎ見るとみるみる影が近づいてくる。

【……ヴォルフ!?】

思わず立ち上がると、すぐ傍にヴォルフは降り立ち翼を羽ばたかせた。

【久し振りだな、ティアナ】

【久し振り……ヴォルフがここに来たっていうことは……】

【預かってきたぞ。
あの小僧なかなか儂に気づかなんだ。
そのくせ、この儂にむかって“可愛くない”とぬかしおったぞ】

【それは……】

苦笑いで誤魔化しているとヴォルフは筒がつけられた左足に嘴を近づける。
早く取れと言うような動作に慌てて筒の中に入った紙を取り出すと、ドキドキしながらその文字を目で追った。
そこに書かれていたのはただ一言。

“息災か”

……これだけ?
唖然としてしまうが同時に殿下らしいと思わず笑ってしまう。

【返事を書くなら書け。
今なら届けてやる】

【あ、うん!
ちょっと待っててね】

新しい紙とペンを持ち慌ててペンを走らせる。
それを筒の中に入れるとすぐにヴォルフは飛び立ちシュトルツ国へ向かった。

【ヴォルフはせっかちだね】

傍で同じように飛び立ったヴォルフを見上げるカミラに静かに話しかけ、さあ、もう少し進もうか!とバスケットを片付けてカミラに跨がると、もう一度ヴォルフが去っていったシュトルツ国の方を見てからカミラを走らせた。

“息災です。
王都へ向かいます”

そのメモが届くまであと数日ーー
< 132 / 218 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop