無愛想な王子は理想の花嫁に求婚する
「ユ、ユアン殿下っ!大変ですっ!!」

大声を出しながらバタバタと走ってくる自分の補佐官を振り返り様に睨み付けると、近くまでやって来たクルトはその表情を見た瞬間びくっと止まった。

「……なに、クルト。
大声出さないでくれる?」

す、すみませんっ!と固まったまま謝るクルトを一瞥してから目を伏せ、緩く頭を振ってから、ごめん、八つ当たりだ……。と呟いた。

ティアナが行方不明になってから三週間以上経っている。
捜索してはいるが全く情報は入らず、生死もわからない。
フライハイト国民はシュトルツ国への怒りや不信感が募り、ブリュッケル公爵を我が国での法に則り裁きをとの声も上がっている。

そんな混乱の対応も相まって疲労困憊となった今はいつものように平静でいられる余裕はなく、最近はなんでもないことで八つ当たりしてしまう自分にも嫌気がさしていた。

「殿下……」

「本当、悪いね、クルト……。
ティアナが見つからなくて参ってるみたいだ」

こんなことなら、あの時に聞いたティアナの計画を無理にでもとめたらよかったと毎日後悔しているけど、今となっては後の祭りだった

「あ、そ、そうでした!
殿下!門番に保護されている人物が……!」

「保護……?」

「門番からの報告では、ティアナと名乗っていると……!」

「なんだって!?」

クルトの言葉を聞き、いてもたってもいられず保護されているという場所に向かって全力で走った。
途中すれ違う使用人達に驚いた顔をされるのも今は気にならなかった。
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