無愛想な王子は理想の花嫁に求婚する
「ティアナっ!?」

王宮を出た大門近くにある小屋のような場所、門番が常に待機するそこへ駆け寄るとノックもなしに扉を開けその勢いのまま中へと入る。

そこには二人の交代待ちの門番とボロボロなフード付きのマントを羽織った人物が椅子に座っていた。
その人物がフードに手をかけゆっくりと後ろへ下ろしながら顔をあげた。

【……お久し振りです、ユアン殿下。
遅くなりました】

ふにゃっと眉を下げながら笑ったその人物こそずっと探し求めていた女性で、目に熱いものが込み上げてくると同時に彼女に駆け寄り思い切り抱き締めた。

【いたっ……!
殿下、痛いです……】

「ティアナ……ティアナ……!!」

ティアナが何か言っているようだったが、抱き締めたまま彼女の肩に頭を乗せていて口の動きを見ることなんてできなかった。
男なのに、この年にもなって涙が溢れて止まらなくて、止め方もわからないなんて知られたくなかった。

肩が震えているから周りのみんなにもティアナにもバレバレだっただろうけど、誰も何も言わなかった。

ティアナが生きていた。
本当に、本当によかったーー
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