無愛想な王子は理想の花嫁に求婚する
「俺の土壇場での求婚、茶番劇とか思われてるの?
かなり傷つくんだけど?」

言いながらユアンが普段は見せない鋭い眼差しをクリスティーネに向けると、クリスティーネはビクッと体を跳ねさせた。
しどろもどろになりながら、わ、私が言っていたのではなく……。と呟いているが、何か思い付いたのか再び国王に視線を戻した。

「き、強迫っ!
あの女は、両国を脅して婚約者候補の座についたと聞きましたわっ!」

「誰から聞いた?」

「え……それは……」

「二つの国を脅すってどうやって?」

アレクシス、ユアンの問い掛けにクリスティーネは明らかにまごついていた。
誰に聞いたのでもない己の妄想で発展した騒動の大きさに未だ気づいていないのか、クリスティーネは、ひ、秘密を……。と言っていた。

「秘密?秘密とはなんだ?」

「わ、私にはわかりかねますわ……ただ、両国間を揺るがすような重大な秘密を握っていて、それで、みなさんを脅して……婚約者候補の座に……」

「馬鹿馬鹿しい」

思わず吐き捨てるようにしてそう言うと、クリスティーネがゆっくりとこちらを仰ぎ見た。
すがるようなその瞳に不愉快になるが、アレクシスは表情を変えることなく見据えた。
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