無愛想な王子は理想の花嫁に求婚する
「田舎町に住んでいた、ただの一般市民であるティアナがどうやって国の重大な秘密を握れる?
最大貴族と謳われていた貴様らが知らぬのに」

「それに、二国間に関する国家機密とも言える資料は厳重に保管されていて誰も触っていなかったことはお互いの国でしっかり確認されたしね」

「そ、そんな……だって……」

狼狽え始めたクリスティーネは視線をさ迷わせると、おかしいじゃない……。と小さく呟いた。

「おかしい……おかしいわ……だって、地位も、お金もない、自分を着飾ることも出来ない、平民の、声も出せない孤児の小娘が……私に……生まれたときから王妃になれと育てられてきた、地位も、お金もあって、完璧に着飾ることができる私に勝つなんて……私が選ばれないなんて、そんなこと……」

「そういうところだ」

静かな口調でそう言うと、クリスティーネはゆっくり視線を向ける。

「俺は婚約者に地位も金も、着飾ることも望んではいない。
俺が望んだのは、香水などつけない、化粧もしない、ドレスも装飾品も派手でない、お喋りがうるさくなく、地位目的でない適齢期の女性、それだけだ」

「だって、私……私が一番王妃に相応しくて……」

「俺が王妃に相応しいと思い、願うのはティアナだけだ」

ガクリと頭を垂れたクリスティーネはもう何も反論する気がなくなったのか、それ以上何も話さなかった。
謁見の間に静寂が訪れると、国王が声高らかに処罰を言い渡した。
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