無愛想な王子は理想の花嫁に求婚する
「許さない……絶対に許さないっ!!
あんたさえいなければ、婚約者に選ばれるのは私だったのよ!!
あんたなんか後悔させてやるっ!!」

その言葉と同時に周りから悲鳴が上がった。
国民の中にいた一人の男が短剣を構えティアナに向かって走り出していた。

「ティアナっ!!」

近くにいたアレクシスがティアナを抱き抱えその身を隠す。
短剣はもう間近に迫っていて、他の騎士達は間に合わない。

【……ヴォルフッ!!助けてっ!!】

アレクシスに短剣が突き刺さるその瞬間、ティアナに呼ばれたヴォルフが男に襲いかかり、男が怯んだ隙に騎士達が男を取り押さえた。
突然現れたコンドルに国民は騒然となる中、執事が叫び出した。

「あの時も……国境で襲った時もあの女が獰猛な動物を呼び寄せたっ!!
その女は動物を操る化け物だっ!!」

ビクッとティアナは体を跳ねさせてしまった。
抱き込んでいるアレクシスにはその反応が伝わってしまっただろうが、アレクシスは強く抱き締めたまま執事を睨み付け何も言わない。

騒動に唖然としながら何も言わない国民の反応が怖くてティアナは動くことができなかった。
その時、ティアナを抱き締めたままアレクシスが僅かに動いた。
< 152 / 218 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop