無愛想な王子は理想の花嫁に求婚する
大好きなクヴェルで、大好きな動物に囲まれて仕事をする穏やかな時間。
シュトルツ国に行く前と変わらない過ごし方にティアナは穏やかな気持ちになっていた。

婚約者候補にアレクシスとユアンに選ばれたこと、暫く王宮で過ごしたこと、騒動に巻き込まれたこと、そして婚約者候補を白紙に戻してもらったこと。
短いながらも慌ただしく、刺激的な日々を過ごしていたのでクヴェルに戻って数日はぼんやりすることが多かったが、そんなティアナを心配してくれた女将さんが以前やっていた仕事に復帰できるようにしてくれたおかげで、今は以前通り元気になれた気がしていた。

「ティアナ!そろそろ上がりだよ!」

広場の奥の方から声をかけられ了承の合図を送ると、男の子とうさぎに手を振ってその場を後にした。
仕事終わりのお昼を買いに露店に向かいながら、今日は何を食べようか、どこで食べようかとウキウキしながら考えていた。

「ティアナ、今日はもう仕事終わっただろ?」

宿屋の前を通ると女将さんに話しかけられた。
頷いて返事をすると、だったらうちで食べてお行き。と手を引かれるまま宿屋に入り、すでに二人分の食事と椅子が用意されているその内の一つの椅子に座らされた。
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