無愛想な王子は理想の花嫁に求婚する
暫くして気持ちが落ち着くと、日が暮れ始めたのか部屋の中は薄暗くなっていた。
その中で小さく、けれどちゃんと伝わるように、ティアナは口を動かした。

【殿下に、秘密を伝えたの……】

「はい」

【でも、反応が怖くて……拒絶されるのが怖くて……何も聞かずに婚約者候補から外してほしいとだけ言ったの】

「はい」

【秘密がなかったら……殿下とずっと一緒にいられたのかなって、最初はそればかり考えてて……】

クヴェルに戻って暫くぼんやりすることが多かったのも、自分に不思議な力がなかったら、アレクシスとずっと一緒にいることが出来たのかもしれないと思ってしまっていたからだった。

「秘密を、殿下が受け止められたかどうかはわからないのですね?」

そう聞かれて、こくん、と頷くとナタリーはふっと微笑んだ。

「ティアナ様、もう一度だけ殿下方とお会いしませんか?」

【え……?】

「先程女将様とお話ししていた通り、両国共にティアナ様はまだ婚約者候補のままでございます。
話し合った結果、最初の予定通り舞踏会でティアナ様から結論を出していただくのが一番いいだろうということになりました」

その言葉に驚き目を丸くするとナタリーは以前と変わらない笑顔でにっこり微笑んだ。
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