無愛想な王子は理想の花嫁に求婚する
「遅くなりました。
アネッサ様をお連れしました」

暫くしてノックの音と共に扉を開け、ナタリーがアネッサを連れてくると、すぐにその場を後にした。
二人きりになった室内でアネッサは一度頭を下げすぐに顔を上げると、ティアナに似たその顔に笑みを浮かべた。

「俺に用があると聞いたが?」

「はい、姉さんのことについてどうしても伝えなければならないことがあり、押し掛けてさせていただきました」

押し掛けてきた自覚はあるのだな、と目を細めて、机に両肘を乗せ手を組んだその上に顎を乗せると真っ直ぐアネッサを見つめた。

「その前に、こっちからも聞かせてもらおう。
確かティアナは孤児だったはずだが?」

「はい、姉さんとは家族との旅行中に盗賊に襲われ離ればなれになってしまいました。
それからはずっと姉さんのことを探していたのですが、両親は心労がたたって最近亡くなって……一人きりになったところ、フライハイト国で殿下と姉さんの話を聞いて、いてもたってもいられず……!」

瞳を潤ませ両手を胸の前で組み合わせ、涙ながらに語るアネッサに内心鼻で笑った。
ユアンが何かを隠していたオスカーを見破ったように、アネッサの下手な小芝居くらい見破るのは簡単で、ティアナを探していたと言ったときに目が微かに反らされたのをアレクシスは見逃さなかった。
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