無愛想な王子は理想の花嫁に求婚する
無我夢中で走りついたその先は中庭で、木の上や草むら、花壇など至るところを探し回る。

今までどんな時でも傍にいてくれていた動物達を懸命に探すも見当たらない、もう何日も会っていないなんてことは初めてで、言い知れぬ不安の中、大きく口を動かし声にならない声を出した。

【みんな……どこにいるの!?
お願いだから出てきてよっ!!】

辺りを見回しながら、草を掻き分けながら、必死に叫ぶも動物達は出てこない。
いつの間に天気が悪くなっていたのか次第に雨が降り始め体を冷たく濡らしていくが、探す手を止めることは出来なかった。

どれくらいそうしていたのか、冷たくなった手を動かすのをやめて空を仰ぎ見る。
自分の頬を濡らすのは雨なのか涙なのかわからなかったが、ティアナはただぼんやりと空を見つめていた。

暫くしてふと、ジルの存在を思い出した。
アレクシスの黒馬のジル、厩舎で軍馬達と一緒にいるはずだ。

思い立ったらすぐにまた走り出す。
冷たい雨が体力を奪うが、構わずに王宮から少し離れたその場所に辿り着くとその勢いのまま厩舎の中に入った。

【みんな……どうして……?】

普段ならティアナが傍にいると動物達の方が寄ってくるのに、どの馬も全く目を合わせようともしてくれなかった。
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