無愛想な王子は理想の花嫁に求婚する
気がつくと暗闇の中にいた。
上も下も右も左もわからなくて、自分さえも見えないほどの真っ暗闇。

動くのが怖くてその場に止まっていると話し声が聞こえ、目の前にアレクシスが現れた。

【殿下……っ】

駆け出そうとするが、すぐ隣にいる人物に気づいて足が動かなくなった。

自分に似た顔をしているアネッサ。

しなだれかかるようにアレクシスの腕に寄り添い微笑んでいる。

【やめて……!
アネッサは私から両親を奪ったでしょ!?
殿下まで奪わないで……っ!】

その声が届いたのかアネッサは此方を見るとふっと笑った。
アレクシスに顔を近づけ何やら耳打ちをし、やがてアレクシスが視線を向けた。

【殿下……私……!】

冷たく細められたその目には嫌悪感しかなく、口の動きが止まってしまうとアレクシスははっきりと言った。

「ティアナの代わりはここにいる」

それ以上何も言うことはないとでも言うようにアネッサと二人、背中を向けて歩き出す。

【待って、殿下!】

叫んでも出ない声、伝わらない口の動き。
悲しくて、悔しくて、駆け出そうとすると先にアネッサが振り返って勝ち気な笑みを浮かべて言った。

「声が出せない欠陥品の化け物はもう、お払い箱なのよーー」
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