無愛想な王子は理想の花嫁に求婚する
何かあったのだと瞬時に理解するもそれがなんなのか検討もつかずベッドに乗ると、何も言わずティアナを抱き締めた。

いつもなら恥ずかしがって身を捩るか緊張して体を固くするのにやはり反応がなく、顔を覗きこんでみるがいつも真っ赤になる頬は色づかず顔色が悪いままだった。

「ティアナ、何があった?」

【……】

「講義や儀式の練習に疲れたか?」

【……】

「……誰かに会ったか……?」

ピクッと微かに反応したティアナの様子を見逃さず、少し体を離して真っ直ぐ揺れる瞳を見つめる。
もしやアネッサに会ったのかと、内心焦りながら再び問いかけた。

「言え。
誰に会った?」

【誰にも……】

「誰にも?本当か?」

【本当に、誰も……会いに来てくれな……っ】

言いながら泣き出してしまったティアナを抱き締め震える体をそっと撫でる。
会いに来てくれない、確かにそう言っていたが誰の事を言っているのかわからなかった。

もしや、ナタリーか?

この王宮に来てからずっと一緒にいたナタリーは今アネッサの見張り役として傍を離れている。
一度ナタリーをティアナに会わせることを決め、アレクシスは未だに涙が止まらないティアナを強く抱き締めた。
< 197 / 218 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop